Kabukichou no joou
Shiina Ringo
蝉の声を聴くたびに
目に浮かぶ九十九里浜
しわしわの祖母の手を離れ
一人で訪れた幸福街
ママはここの女王様
息詰まりのようなあたし
誰しもが手を伸べて
子供ながらに魅せられた幸福街
十五になったあたしを
置いて女王は消えた
毎週金曜日に来ていた
男と暮らすのだろう
一度逆しものでも必ずやおとろえゆく
その意味を知る時を迎え
足を踏み入れたは幸福街
消えていった女を憎むでも夏は今
女王という肩書きを
誇らしげにかかげる
女になったあたしが売るのは
自分だけで
同情をよくした時に
全てを失うだろう
JR新宿駅の東口を出たら
そこはあたしの庭
大遊戯場歌舞伎町
今夜からは
この街で娘のあたしが女王